VISAの取引量を上回った!北京冬季五輪会場で人民元デジタル決済が急増
今月4日に開催された北京冬季オリンピックの開会式当日に使われた会場内の決済手段において、中国の中央銀行デジタル通貨(e-CNY)がVISAの取引量を大幅に上回ったことが、ウォール・ストリート・ジャーナルの報道によって判明した。
北京五輪の組織委員会は五輪関係者と外部の人間との接触を極力避けるために「バブル方式」を採用しており、選手やスタッフ、ジャーナリストなどは大会の期間中は特定の区間の中に隔離されることになっている。
バブル方式の中では現金、VISA、デジタル人民元の支払いに対応しており、法定通貨をデジタル人民元に交換するための自動販売機も設置されているという。
基本的には中国の銀行口座が無いとデジタル人民元のアプリは使えないようだが、海外から来たユーザー向けにプリペイド式カードも発行しているようで、500元とパスポートを預けることで利用が可能になるようだ。
コロナ復興後には外国人観光客向けに、これらのサービスを提供していくことを想定しているようで、中国の銀行口座を持っていない顧客でも、クレジットカード以外の決済手段として、より利便性の高いサービスを提供する事を目指している。
近年にはテンセント傘下で中国最大のメッセンジャーアプリである、WeChatのペイメントサービスであ「WeChatPay」とデジタル人民元が連携すると発表があり、8億人のアクティブユーザーを抱える同社のネットワークを介して中国内の多くのユーザーに訴求する計画を着々と進めていることがわかっている。(本大会はVISAとの独占契約のため、これらアプリを使った決済は禁止されている)
中国政府は冬季北京オリンピックを「デジタル人民元のショーケース」と位置付けており、これまでも国内の主要都市で、実証実験を進めてきた。2021年末までに個人のデジタルウォレットを開設した数は約2億6100万人も存在しており、日本の総人口の2倍に当たる人々が口座を開設していることになる。
しかし、それぞれCBDC(中央銀行デジタル通貨)の構想を持っている国からすれば、中国のデジタル通貨を自国の選手に使われるのはあまり面白い話ではない。
参加するジャーナリスト達は、デジタル人民元を使うことのメリットがあまり感じられないとして、決済に使う人は殆ど存在しないことを示唆、クレジットカードによる決済がメインであることほのめかしている。
今回の報道で取り上げられたデジタル人民元の取引量が増加した背景には、中国関係者による使用を集中的に集めたことが要因として考えられるだろう。